第22回 開発番号15 移動ゲートによるスクランブル射出(2)

射出成形に必ず伴うウェルドライン(ウェルド)がある。樹脂特性を失うやっかいな問題でもある。ウェルドのメカニズムを噛み砕いて説明するとこうだ。ゲート口から射出された樹脂は押し切りなど、障害物により分離、もしくは流量の均等、不均等を経て最終的に再び「合流」する。すべての射出成形製品はこの製造プロセスを経て生産されている。合流するとき、双方の樹脂温度、流動速度、流動圧力は限りなく同一であり、合流面には必然的に合流線が入る。これがウェルドだ。

ある技術者は極力目立たないように金型温度を上げた。上げるとサイクルが延びるので金型を急いで冷やした。急加熱・急冷却である。大きなボイラーと大きな冷却装置をこぞって備えた。結果、目立たなくなったとの一定の評価も得られ、世界中の成形技術者たちが一件落着と考えている。一見薄く消えたように見える外観も表面から数十μm程度の話。内部のウェルドが消えるわけではない。外観部品はギリギリ良しとしても、機能部品はこの手法では解決されない。

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