第38回 開発番号62小型射出成形機【C,Mobile】(6)ことの本質
「本質を直視せよ」。故衛藤五郎氏(双葉電子工業)が若手の技術者に向かいよく口にした言葉だ。筆者が開発に目覚めた頃、何度となくつぶやき自身に言い聞かせた。前回も述べたが、頭の中の引き出しは縦軸に5 段、クロスする形で横軸にも5つの引き出し。引き出しの中はいつもいっぱいで、時々思い出しては咀嚼し、すぐに解決策が見いだせなければ再び引き出しにしまいこむ。そんな出し入れを30数年間も繰り返していると、モノの本質が嫌でも見えてくる。時間をかけた分、ことの本質は外していないと自負している。
洞察力・推察力だけは経験を積んでいる分、ことの本質の見分け方には多少たけているはずだと思っていた。スクリューの本質はいかに? と問われたとき、何か変だ、おかしいと違和感を覚えたのは不覚にもここ数年のこと。思えば射出成形・可塑化過程にかかわる重要な案件であり、金型技術者にとっての一丁目一番地。成形技術者のイロハのイ。